この本、とってもよかったです。
何箇所もチェックしてしましましたが、
最後の最後の「無名に埋没せよ」という章内の
「知のとびら」の一節です。
女子大生へ「しかし、最後に申し上げたいのは…」という渡辺さんの言葉から始まる一節なのですが、とっても心に残りました。
吉本さんの「ひとり」は、中学生との対話形式であり、
本書は女子学生(大学院生もいました)との対話形式ということで、
ひとつひとつのメッセージがとっても心にしみました。
一生学問をやっていかれるとは限らないと思う。でもここでの知の世界、思想の世界、人類全体の問題というふうなことに出会われたのです。専門的にそういう学問をやっていかないとしても、仮に平凡な妻、母親になるとしても、一生本を読んでいきなさい。本を読むということは持続です。書くこともそうですが、持続です。
私はさっき言ったように、10歳くらいのみぎりからずっと絶え間なく書いてきたように思うんですが、これも持続です。学問も持続です。だからずうっと本を読んでいきなさい。
私は平凡な社会人になったらもう学問とは縁がない、とは思わないことです。普通の平凡な社会人でもちゃんとした読書人にはなれます。一生本を読み続けることが大事です。そして何かこういうことがやりたいな、研究したいなってことがあったら一冊の本を書きなさい。書いてもいいんです。そのためにはあるテーマに関する文献、研究書を読み上げなきゃいけないでしょう。自分自身の見方というのが必要でしょう。でも私のような大学の教員になったことが一度もないような人間、民間でずうっとあくせくして、綱渡りのようにして飯食った人間にもできることです、やる気さえあれば。
学者や研究者になるとか、あるいは変な意味での自己実現をするということじゃなしに、一生何かを模索していく。人間とはなんなのか、どうあればいいのか、社会というのはどうあればいいのか、一生模索していって、本を読んでいってテーマをつかんだら本を書くといい。
「論語」に出てくる話だけど、孔子のかつてのお弟子が孔子に言いました。私なりに脚色していうと、
「私は先生のことはずっと尊敬しております。先生に習って、また若い頃考えたこと、習ったことは心の中で大事なこととして思っております」と。
こう言われたら、ほう、感心じゃ、と言うのが普通でしょう。でも孔子は、「汝中道にして廃せり」と言ったんですよ。おまえは道を求めることを途中でやめたと、突っ放したんです。実に厳しいですが、孔子というのは正しいと思います。孔子さんは偉大なる教育者だね。
女子学生、渡辺京二に会いに行く (知のとびら)
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